-------------------- 15巻・前編 --------------------
さぁ来ました〜待望のイシュヴァール編です!
…とは言え、作者さま入魂の戦争描写も何のその、殲滅戦の真の主役がロ
イとリザだったとは…もっと正確に言えば、リザがここまで作品の中核に
食い込んでくるとは、誰も予想してなかったのではないでしょうか。
前巻の衝撃的な幕引きがすべてを暗示していたかのように、まるまる一冊
をかけて、ロイとリザの運命としか言いようのない結びつきが明かされて
ゆきます。まさにロイアイ革命ここに…!!という感じですねv
彼ら2人の関係についての最も過去のシーンがこうして描かれた以上、も
はやこの15巻抜きではロイアイを語れません。だから、今回は革命である
と同時に「ロイアイ元年」でもあると思いますねv
ともかくこれで、今まで14冊にわたって読者の妄想をかき立てていた「2
人の深い絆」の指すところが、何もかも明らかになったわけです。今まで
2人に徹底した「上司部下強調」「階級呼び」を貫かせ、読者に「すれ違
う両思い」を信じさせた牛先生の、ペテンの腕前には完全に脱帽!
や、もう恋人どころの話ではないです(笑)彼らの仲は最初の最初からカ
モフラージュ。ロイにとってリザは師匠の娘であり、「焔の秘伝」の授け
主であり、そして自分の生殺与奪の権利を明け渡した、文字通りの伴侶。
その絆には、初めから他人の入り込む余地などこれっぽっちもなかったの
です。本当に、お互いのためだけに存在する運命のペアだったんですね。
もう萌えを通り越して放心状態ですよ…vv
「相愛」を立証するべく立ち上げた考察サイトとしては、いつか作品の中
でそれが証明されることが理想の展開でした…!ですからわたくし鈴々、
この15巻はもう本気で本望ですv思い残すことはあまりないかもvこれで
サイトを閉鎖してもいいくらいです…などと言いつつ、やっぱり物語の最
後まで見届けるために当面は続けますけれども…(笑)
ただ、ロイについては少々残念なイシュヴァール編になっていると思いま
す。というのも、リザとの絆の事に重きを置いているために、肝心のロイ
の決意(どういう心情変化をたどってトップを目指すに至ったか)につい
てはあまり迫真的な描写になっていないのですね…。これは巷で通説とな
っているとおり、やはり巻をまたぐのを編集さん側が嫌ったのだとか、様
々な事情があってのことだと察しますけど…そこまで読者が言及する権利
もないと思いますし、残念だけど納得するほかありませんね。
でも、この一冊で今までの「ロイ像」が一新されたことは確かに確かでし
ょう(笑)かわいい若ロイの、この青臭さ、不器用さ、世間にすれていな
い様子などを見ると、今までの「デートデートと連呼する抜け目ない男」
というイメージは一体いつどこで身に付けたのかと本気で不思議になりま
せんか!?何なんでしょうね〜この純情で直球でウブそうな子は!(笑)
ま、それについてはまた考察の機会を探すことにして。
そろそろ本題の感想にいってみます。「ロイアイ的最重要ポイント」とい
うことで、15巻は特別に前編・後編に分けて語ってゆきますね。
◆2人の師匠
ロイには2人の師がいて、それは基礎を教えた師匠と焔の錬金術を教えた
人である…というのが、今までに荒川先生が与えてくれたヒントでした。
そして今回、やっとここに解答が…vvうーんやられましたねー(笑)よ
もやその2人が父娘の関係だったとは…!
同人ではすでに妄想され済みでしたが、これで2人の幼馴染み説が確定v
もっとも、エドアルとウィンリィのようにごく幼い頃から一緒だったとい
う訳ではなさそうですが。
「師匠」と「人」を言い分けているところから、リザ本人は錬金術師では
なく、ただあの背中を見せて「焔の錬金術理論を伝授した人間」だ、とい
うことが分かります。もちろん、リザの背中の陣は発動目的ではないです
ね。教材なんです。(いや、そんな軽々しいものじゃないけど。彼らにと
っては父の遺産、師の形見なんだものね…。そして、2人を結ぶ絆そのも
のでもあったわけだから。まだこの頃は、ね。)
そして、牛先生がリザのハイネックの理由を「少年誌で描けない」とおっ
しゃったワケもこれで腑に落ちましたね(笑)「入れ墨があるから」じゃ
ないですよvその入れ墨も含めて、彼女の素肌をロイが見たのだという事
実が描けないのです。(←考察#6で詳細に述べたので繰り返しませんが、
もしも興味がおありの方は
こちらへv)
し か し…想像を超えたホークアイ家の様子には驚きましたね。極貧?
しかもリザパパの風貌のすごいこと…;これはまさしくマッドサイエンテ
ィストですね。研究に没頭するあまり、自分に生身の肉体があることを忘
れるタイプだ…。さらに血を吐く師匠ですよー!?ええ、もう一人います
ね血を吐く師匠(笑)パパもイズミ女史のように禁忌を犯して、内臓をも
ってゆかれた状態だと考えることも可能かも知れません。「満足した」と
いう台詞は、真理にたどり着いたという意味にも受け取れますから。
でもまぁ、よくもこの父親からこんな可憐な娘ができたものですね。少女
リザの可愛さといったら…!もう天使ですよ天使vvママの遺伝子まるコ
ピー??半分だけなんて嘘だ〜みたいな(笑)
いや、少年ロイも可愛すぎですv師匠相手にとても表情豊かに話している
のがいいですね。軍のキャッチコピー(聞くからに大衆向けコピー;)を
真剣に信じて…。しかも師匠の生活をすごく心配して。優しい子なのね。
それにしても…「リザ!!」ですよ〜萌えっvvああもう、よくも今まで階
級呼びなんかで読者をあざむいてくれたな、と言いたいくらい(笑)プラ
イベートでは絶対ファーストネームで呼んでますよねロイは。
ただ、本編の中で次に彼がリザをそう呼ぶシーンはいつのことか…。多分、
ロイが目的を遂げた後でないと描かれないだろうな…。彼ら2人が困難な
道を乗り越えて、何とか幸せにたどり着いた時、きっと牛先生はもう一度
ロイに作中で「リザ…」と呼ばせてくれるはずだと信じてますよ、私。
◆スカー兄弟
そして、リザの語りからついに突入するイシュヴァール回想!
同時進行でノックス先生、マルコーさん、さらにはスカーの視点も織り交
ぜてある、というビジュアルな手法で話は進みます。
特に、今まで語られたことのなかったイシュヴァール人側の事情は新鮮で
したね。なるほど〜この兄さんがアメストリスの錬金術にハマっていた事
が余計に、スカーの復讐心をあおる原因になったわけか。なぜって兄者、
最後にはその錬金術に命を奪われてしまった訳だから…スカーにしてみれ
ば、アメストリス人への憎悪=錬金術への憎悪なのかもね。
これは恐らく、ロイとシンクロさせてあるのかな。だって同じでしょう?
良い方向へ錬金術を使うために勉強していたのに、あの殲滅戦が彼らの良
心を丸ごと裏切って、結果的に殺戮のために使うことになったわけですよ。
…これは、原爆理論を編みだしたアインシュタインの苦悩と似たものがあ
りますね。サイエンスの純粋な探求心を政治(黒幕)が悪用する皮肉、と
いうのも鋼のテーマなのかな?
ただし、スカーにとってはストレートに錬金術が復讐の対象となっていて
当然なのですが、ロイの怒りの矛先が単純に軍上層部となっていない所は
興味深いと思う。彼はまず、何よりも先に自分の無力を責めたんですから。
リザに「信じていたのになぜ…」と問われた時も、国家錬金術師を殲滅戦
に投入した大総統を呪うのではなくて、軍の受け売りを信じた自分を責め
たんですよね。なんて潔癖な子なんだろう(涙)…実はリザも同じです。
あの質問は、本当はロイを責めているわけではなくて、「焔の秘伝」を伝
授した自分への後悔なんですよね。
そういう潔癖さがロイアイの愛おしさなんだけど…だからこそ、ロイの野
望が単純な勧善懲悪ではなくなっているんだけど…。でもその潔癖さのた
めに、せっかく運命のペアでありながら、彼らはその絆に足枷のようにし
ばられている気もするんですよね、私…。リザが後半で背中を焼いてくれ
とロイに頼み、「縛めを下ろし」と表現したのも、その束縛感を指してい
るんだと思うの。
ロイとリザ…もちろん愛があって一緒にいるはずですが、一方で「一緒に
いるしかない」と言うか、「お互いしかいない孤独」とでもいうものを感
じてしまって…。だから戦場の若ロイアイは、抱きしめたいくらい無垢で
可愛いけれど、どこか寂しそうで見ていて哀しいのです。
この15巻を読むと、主人公のエドの直面している壁と同じくらい、ロイと
リザの葛藤も甚大な気がしてなりません。それは私が大人だから、年の近
い者として彼らの方に共感しやすい、ということももちろんあるのですが。
でもここまで来ると、荒川先生の描きたかったのって本当はロイアイ…?
と、そこまで勘ぐりたくなりますよ〜ほんと。
それくらい、壮絶な絆で結ばれた2人だと思います。不可侵、ですね。
◆戦争の描写
気付けばついついロイアイ考察になってしまっているこの巻(笑)でも、
他の場面についても書きたいことは盛りだくさんです!
そう、ウィンリィのご両親のことも大事な伏線ですよねー。わはは〜両親
双方ともウィンリィに似てることv…というか、あのご夫婦同士がすごく
似てますよねー。
何と言いますか、こちらが恥ずかしくなるくらい清く正しいご両親様で。
はっきり言って、本誌での初読時はかなり「偽善者?」という疑問を感じ
つつ読んでいました。つまり…彼らがやってることはもちろん立派なので
すが、でもそれじゃアメストリス軍の中で負傷者の手当をしている軍医さ
んたちは、虐殺者の手助けをしてる悪人ってことになるの?…とね(笑)
わざとシニカルな突っこみを入れたくなったのです。
でも、今回コミックスで読み直したら思い直しました。彼らは承知の上で
偽善をやっていたんですね…。他人から見たら偽善と指さされるのを知り
つつ、わがままを貫いたんだと思う。正義感に酔ってのことではなかった
んですね。キンブリーの指摘が正解なのでしょう。
ただ、大局から見られるオトナはいいけど、もし年若い読者があれを真に
受けて、敵軍を助ける方が立派なんだ!という思考に行ってしまったら嫌
だなとは思います。せめて敵味方なく助けた、という描写の方が無難だっ
たのでは。ま、年寄りの余計な心配ですけどね(苦笑)
それにしても、できれば目を逸らしたい傷を直視するような、痛々しくて
生々しい描写ばかりです。どうも全体を通してナチスの縮小図みたいな描
かれ方だと思いますが…イシュヴァール人の苦悶の表情とか、牛先生も描
いてて楽しかったはずはないと思うので、戦場そのものの描写に関しては
論評をパスしたいものです。
一つだけ言えるのは、おいしい役どころの人間は1人も登場しないという
ことかな…。ええとつまり、純粋なヒーローも純粋な悪役もいない、とい
うこと。これは牛先生の心意気でしょう。キャラクターが皆、それぞれの
方向で自分を出し切っているんですね。一方的な殺戮を描いているのに、
それって凄いことじゃない?
例えばマルコーさん。彼も業の深い人ですね…。不運で気の毒な人だとは
思うけど、ただただホムたちの言うなりになっているところが業の深さ。
逃げもせず、闘いもせず、悪役でもない…という意志薄弱さには溜め息が
出ます。彼の本気の闘いは、もっと後に用意されているのでしょうね。
そこにいくと、アームストロング少佐は偉大です。将来を棒にふってさえ
自分らしさを貫いたんですから。…ああ、でも少佐のシーンは本気で読む
のが辛かった(涙)こんな人、戦場に連れて来ちゃだめだって言いたい。
今回のシーンを見てから8巻の閣下のセリフ「だからお前は出世できんの
だ」を思い出すと、この2人の温度差に思わず戦慄しますね。
そして、何やらとてつもない期待を感じさせつつ登場したキンブリー!!
…はい、あまりにも「無駄に」男前ですが(笑)
この人の清々しいまでの狂気は、この重苦しいイシュヴァール編にあって
はむしろ清涼剤のようでしたよ。あの恐ろしく印象的なシーンで、殺しに
倦んだロイリザ、ヒューズや兵たちに「仕事と割りきれ」と説く彼の姿は
もう神々しいほどで…(笑)きらめく正論でした。…ただし、皆が狂気に
いる中で1人だけ正論を唱えられる冷静さこそ、真の狂気なのでしょう。
実際彼は、仕事と割りきって殺戮をしている訳ではないですよね。単に殺
すのが愉悦なだけ。バリー(66)と話が合うんじゃないかな〜。
◆戦場での再会
さて、そして意外だったのが、ロイとリザそしてロイとヒューズまでもが
この戦場で「再会」していたことです。えーっずっと連絡を取り合ってい
たわけではなかったんですね。
ロイとヒューズの再会は爽やかでいいなぁ。士官学校時代の話も、ただた
だ青い感じでなんだかね(笑)若いな2人共v
ロイなんか若いというよりまだ幼さもただよっていて。ヒューズの手紙の
差出人を見て「女か?」と問う所なんか、もう純情うぶうぶで可愛すぎま
すよねvこれで女性体験豊富だったら嘘でしょう!
そう、意外にもヒューズの方が数段世慣れているらしいということも、こ
の15巻での新たな発見でしたね。どう見ても若ロイはただの純朴青年…。
ヒューズがこのあと恋人バカ→旦那バカを経て親バカへと変化してゆくの
は容易に想像がつきますが、若ロイがどういった経路で「デート」「ミニ
スカ」「太もも」果ては「跪け」にまで進化していったのかはまったくの
謎!!次なる研究課題ですー(笑)
それにしても…ロイとリザが肌を介してまで秘伝の伝授をおこなったにも
かかわらず、かなりの疎遠状態の後からの再会らしい、ということには驚
きでしたね。それが例のサイトスコープ越しの回想シーンとひと続きだっ
たというのは、悲惨な戦場でのせめてものロマンだったように思いますけ
れど…。
いえ、だいたい再会の直前にヒューズ&グレイシアを出して来たところが
まず演出ですよね(笑)ああやってごく普通の、よくあるカップルを示し
てみせて、ヒューズに「お前こそ浮いた話のひとつやふたつ…」と振らせ
てみせて。これがそもそも、ロイにはそういう軽々しく口にできない女性
が…忘れられない特別な相手がいるんだという暗示ですよね。それですぐ
後に「鷹の目」のシーン!それから再会…
とてもロマンチックですv
しかし、過去の2人の間に何か恋愛事件的な出来事があったのでなければ、
「女」に「ひと」のルビは普通振りませんよね。いくら大切な師匠の娘と
はいえ、年齢から見ればロイにとってリザは「この子」でしょう。それが
「女」で「ひと」…!!も、悶え死にます…
「覚えておいでですか」「忘れるものか」のやり取りも、お約束のように
意味深すぎます。もちろんその真意は、「忘れるはずもありませんよね」
「当然だろう」といったところでしょう。
どうやらここが、最大の「少年誌の壁」だったようですね(笑)
具体的なことを何も描かず、ネームのみで具体的な2人の関係を示さねば
ならないという難関を、なんと漢字一文字で切り抜けるとは……!!
牛先生のウルトラCには本当に脱帽ですv(笑)
そして、リザが父についてロイと語るシーン。このただよう悲壮感は何な
のでしょう。青年期の盛りなのに、心を消耗した様子の2人がただもう切
ないです。それこそ、「忘れるものか」な過去を共有していなければでき
ない表情ですね。これがロイアイの原風景なのかなぁ…。
回想として間に挟まれている墓前シーンからも、ただただ2人がぽつんと
世間から隔絶されているような錯覚を覚えてしまう。喪服の仔リザの、ど
うしようもないくらいの愛くるしさv…でも、それでもあの小さな背中に
はもう火蜥蜴が彫られているんですよね。そしてあんなに可愛いペアなの
に、彼らはあの後すぐに運命の選択をしてしまう…。あれがまさに「引き
返せなくなる地点」だったんです。
上の方でも言いましたが、「信じていたのに…」という言葉は実はロイを
責めているのではないと思うんです。ここで「軍が悪いんだ!」と割りき
れればストレスは溜まらないのに、責任のありかを自分に持ってきちゃう
ところがロイアイというか…。馬鹿正直なのよねー(涙)
でも結局は、リザのあの問いかけがロイを変えた原動力なのでしょうね。
まるで彼は、リザの笑顔を取り戻すために野望を追い続けてるようにも思
えてくる。
あのP89のシーン…ロイがもう何も言えなくて立ちすくんでいる様子とか、
切なすぎて…!こちらの胸が痛んで仕方ないですね…
さて、前編の最後は何かに気付いたらしいスカー兄について。
この時点でこの人、「西の賢者系(シンの錬丹術)」と「東の賢者系(ア
メ国製)」の差異に気付いた様子ですね。いや、差異というよりアメ国系
の論理構造そのものがおかしい、という意味に聞こえる。
では何が「おかしい」のか。これはまだ判然としませんね。「地脈」に関
係がありそうではあるけど…それは多分そのまま、エドたちの錬金術が封
じられた理由になるわけですが。ということは…
そうです。恐らくはスカー兄の研究書、そして腕の錬成陣(現在はスカー
の腕)を学んで使うことが、お父様との最終決戦でエド側(人間側)が勝
利するための鍵になるのは間違いないでしょう。そうすれば、スカーはも
ちろん兄の仇を討てたことになるし、間接的にはスカー兄がイシュヴァー
ルを(アメストリスも一緒に)救ったことになる。イシュとアメ国の間の
民族感情は落着して、ウィンリィも納得せざるを得なくなるでしょう。こ
れで万事は円く収まります!
物語の上で、「ウィンリィがスカーを許容する」というのはアルが身体を
取り戻すのと同じくらい大きなトピックなんですよね。そこから考えても、
今回あの兄者の気付いたことは重要な意味を持ちそう。今後に期待です!
今回はロイアイストにとっての最重要巻!ゆえに長丁場ですすみません;
感想・後編へ続きます。