◆火蜥蜴を背負う女◆

**** ロイアイ考察第6弾(本誌第57話より) ****


今回は論文調でなく、緊急読書感想文です。
本誌2006年4月号、ついにリザのハイネックに隠された秘密が公開へ…!
今までのロイアイ像をひっくり返す大きな節目を再び迎え、
エマージェンシー考察を急遽試みました。
コミックス第14巻についてのネタバレとなりますのでご注意下さい。



あれは何かのインタビューの場だったでしょうか?かなり以前のことですが、荒川先生が公式発言として、
「リザがいつもハイネックを着ているのには理由があるけど、少年誌では描けない」と仰ったそうですね。
ファンの妄想をかき立てるこの問題発言……長い間、キスマーク説から所有印説まで、あれやこれやの憶測
を呼んだわけですが、ここにきて先生自らがその封印を解いて下さるとは思ってもみませんでした。
…火蜥蜴の、タトゥー錬成陣。
ある程度はファンの予測どおりだったと言えそうですが、その禍々しさは想像をはるかに超えていました。
原作至上主義サイトとしては、ここで考察をせずして何とするという場面です。
しばし屁理屈にお付き合い下さいませねv




うーん。他サイト様をあちこちのぞいた感じでは、あれを彫ったのはロイだというご意見が多いようです。
…あ、いま心が揺らいだ私(笑)いえいえ、でも、やはり違うと思います。
なぜかと言えば…やっぱりあの「重さ」でしょうか?あそこまで禍々しい印が、ロイの愛の証だとはどうし
ても思えないのです。文字通りリザが「背負って」いるらしいもの…それはあまりにも運命的で、幸せなも
のとは程遠そうで。そんな凶悪なものを背負わすことは、いくら恋人でも他人ではできないと思うんですよ。
ですから、やはり彫ったのはリザを私物のように扱える身内、恐らくは親だろうと考えます。
そして同時に国家錬金術師だったと考えれば……これはずばり、「彼女の父親」でしょう。

いや、親でも普通はあそこまでしないですよね。そこをあえて年頃の娘にあんなグロテスクな印を彫ったの
は……やむにやまれぬ状況だったからだと思います。例えば急な死を前にした、存在証明みたいなもの、も
しくは遺言のようなものなのでは、と。
錬金術師なら、自分の奥義というか、集大成をああして図式化して残しそうではありませんか?そして、紙
か何かに書いたら破られたり燃やされたりで隠滅されるおそれがあるけど、入れ墨なら?…確実に残ります
よね。だから…リザの父親は差し迫った状況下で、秘密裏に自分の最大の技(奥義)を錬成陣として娘に遺
したのでは、と想像します。
では、彼にそんな行動をうながした、どのような状況があったのでしょうか……。




一方、もう一つ浮上してきたのが「人間兵器説」。リザのみならず、イシュヴァールでは「人体実験」とし
て兵士に試験的に錬成陣をつけさせ、それを敵前で発動させて「人間爆弾」の効果をレポートしていたので
はないか、という説ですね。リザも被験者の1人だったのですが、ロイの個人的な感情によって錬成陣を無
効化され(あの火傷)、助けられた…と。それを期に、リザは彼に忠誠を誓うようになった…。
あちこちのサイト様の考察、そして頂いたご意見を総合すると、こんな感じでしょうか。
(トモレグ様、アルファキュート様他の皆さま、参考・引用させて頂きました!)

うーん恐ろしい。キンブリーなんかも参加してたことだし、いかにもあり得そうですよね!
でも…私のリザを想う私情からかも知れないのですが(笑)…おそらく、それはないような気がします。
以下にその理由を箇条書きしてみますね。

1:まず、あまりに非人道的〜(うむむ)
万が一、身内でも恋人でもない他人がリザにあれを彫ったのだとしたら、それはほとんど陵辱に近い状態と
か、想像もおぞましい状況を考えざるを得ません。いくらなんでもそれこそ「少年誌」では描けないのでは
ないかと思う…。「人間を原料に石を作った」というのが、人道面からの少年誌ギリギリの線なのでは?


2:そういう実験なら背中に入れ墨でなくても良さそう
手に錬成陣のはんこを押せば済みそう……。ロイですら、手袋に刻むというやり方であの威力なんですし。
また、リザの入れ墨の「細密度」が気になりますね。ロイはもっと簡略した陣でもあれだけの効果を生んで
いるわけですから、何やらその上をいく威力がありそうな予感もします。少なくとも、ロイよりも能力が上
の人間が描いたもの、という伏線のような気がします。

3:それなら、ロイたち錬金術師が「人間兵器・化け物」と忌まれることもなさそう
味方兵を使って人体実験をしたなら、人間兵器と言われるのは被験者の方になってしまいます。やはり、あ
くまで「錬金術師の能力の引き起こす効果」が恐れられたのだと思う。

4:今までの伏線が無意味になってしまう
「銃は人の死にゆく感触が残らなくていい」というリザの言葉や、イシュヴァル人の少年の遺体を抱いて涙
しながら軍令に背いた少佐の描写が無駄になりそう。少佐なら、まずその実験そのものに反発するような気
がしますし……。

5:戦略的に逆効果かも知れない
あくまで異民族の内乱を鎮圧するという大義名分なので、味方の人間を人体実験に使ったら国民から疑問視
されそう。やはり、人体実験はイシュヴァルの人々のみが被験体だったのでは……。


…等々です。
そんなわけで…あれがリザのイシュヴァールがらみの傷だと言うなら、そしてリザこそ内乱の「当事者」な
のだと言うなら、もっと別の理由があるような気がするのです。
確かに今月号の煽り文句「火蜥蜴の陣は何を意味するのか」というのは、他の人物よりもリザをクローズア
ップするような言い方ですよね。
思い出してみれば、あの内乱の発端は、ある穏健派の将校が(エンヴィーが化けてたわけですが)、イシュ
ヴァール人の少年を撃ったという事件でした。そしてその将校は、軍法会議で無実の罪を着せられて抹殺さ
れたのでした。
では、この将校こそリザの身内……他でもない父親だったとしたらどうでしょう?
……パズルがぴったり合うんです。今までの伏線が、無理なく一続きになる。
ですから、やはり「イシュヴァールの陰のヒロインはリザだった」のではないでしょうか。あの入れ墨こそ
がそもそもの発端であり、また「イシュヴァール戦の象徴」なのではないかと推測します。




話を戻しますね。
ロイが彫ったのではない場合、あの錬成陣の彫り師とロイが師弟関係にあったことはほぼ確実でしょう。図
柄の共通性からも、その弟子こそロイに間違いありません。(彼には2人の師匠がいた、と荒川先生が公式
発言をしているそうなので、そのうちの1人ということですね。うーん「師匠が2人」という設定はかなり
引っかかるけど……今のところ分析の手がかりがありませんからねぇ)

ですから、リザの父将校(つまりは初代・焔の錬金術師)が濡れ衣を着せられ、しかも死を免れないと悟っ
た時、まず考えたのが「後のことをロイに託さなければ」であったとしても自然です。
それは第一に、自分の錬成理論の集大成であるあの錬成陣だった。
これは妄想にすぎませんが……投獄された父に面会に行ったリザが、その場で背にあれを彫られた……なん
てことがあったらすごいですね。父上にあまり時間がなかったのは確かだと思うし……。

それはよいとして、おそらく弟子に託されたのは錬成陣だけではなかったことでしょう。まず、同時にリザ
を丸ごと託されたはず(笑)「この子を頼む」って。まぁ、父上がロイの師匠なら、娘のリザとの出会いは
かなり早期ということになるでしょうから、幼なじみまでいかなくても10歳と15歳くらい?とか十分あり得
る線でしょうし、すでに2人は仲良しだったと思いますけどv

それから、もう一つ託されたのが…後にロイの野望となる「この国を変えてくれ」だったのかも知れません。
つまり、ブラッドレイの政権を覆せ、と。リザの父親ほどの人間が、自分の冤罪を晴らすためだけに復讐を
遺言したとも考えにくいです。いえ、ロイやリザの胸の内にはそういう復讐の思いが渦巻いても当然だけど、
もし父上が軍でも指折りの立派な将校で、立派な錬金術師だったとしたら、今後の国の行く末を憂いてそう
いう願いを託すんじゃないかと思うのです。(その時点でウロボロスの存在に気づいていた可能性も?)

そして娘のリザには、ロイがその目的を果たすための助けとなるように、あの入れ墨を彫った。
たぶん、「命をかけて彼を守れ」と言いきかせて。だってあの錬成陣から発動した術の威力は…すさまじそ
うですよね。きっと、手袋も銃もすべて奪われても、生身のリザさえ隣りにいれば、ロイはあの背中の陣を
使って逆転ホームランを打てるんじゃないかと思います。起死回生のね。
だから、対ラスト戦で泣き崩れた時にリザが思ったのは、「側を離れるんじゃなかった」という後悔だった
のかも知れません。

でも…リザから見れば、ロイを巻き込んでしまったという思いが強いのかも知れない。自分の父親のせいで、
ロイが人間兵器として精神崩壊ぎりぎりのところまで追いつめられてゆくのを見たら、彼を解放してあげた
いと思って当然です。ロイを自由にするために、自分の背中の陣を焼いてくれと彼に頼むこともあったかも。
ええ、あの陣を壊すような火傷はロイがつけたものだと思います(S様へ☆)。
あ、逆もありかな。むしろロイの方が、「君を火蜥蜴から自由にしてやりたい」と思って無理やり焼いた、
とか…。どちらにしてもロイの行為ではないかと。でも、結局は消しきれなかったのでしょう。この辺り、
かなりどろどろした葛藤もあったような感じですが。
(いえ、単なる戦乱の事故であって、故意に焼いた訳じゃない可能性も濃厚ですけれど/笑)

でも、結果として彼らは「自らの意思で」再出発を果たしたんだと思います。
コミックス6巻での、エドを勧誘にきた時のリザとウィンリィの会話。「それは誰に強制されたわけでもな
い、私が決めた事」「私は私の意思で引鉄を引くの」というリザの名セリフ、そして4巻ヒューズ埋葬の後
のロイのセリフ「大総統の地位をもらうのもヒューズの仇を討つのも全て私一個人の意思だ」、どちらも彼
らが「自分の意思だ」と強調しているのが興味深いですよね。
おそらく、イシュヴァール戦を通して彼らのメンタリティに何か劇的な変化が訪れたんだと思います。
ノックス先生の言うところの「巨大な人体実験場だった」の意味、賢者の石の効果の実験など、イシュ編で
明かされそうな事実はたくさんありますが、ロイアイスキーとして注目したいのはやはりロイの心情変化。
彼がどうやって野望を抱くまでになったのかが必ず描かれるはずだと思うんです。そこにリザのタトゥーが
どう絡むのか……。

悲惨なお話には違いないと思いますが、12巻のカバー裏で先生が引用なさったお言葉……「救いのない話に
も、フィクションだからこそ救いをつくってあげられる」というのを信じて、一大感動巨編を楽しみにして
いようではありませんかv




こうしてみると、「少年誌では書けないこと」とは、もしかすると「ロイがあの錬成陣を知っている理由」
かも知れませんね。いえ、ストーリーとしては絶対知っているはずですけど、そうなるとロイはリザの裸を
見たことがあるという意味になるわけで、この期に及んで「偶然着替えを見ちゃった」などというお子様な
顛末が大人な男女に適合するはずもなく(笑)、暗に彼らの肉体関係を示すことになってしまうのでは。
そのあたりはどうぼかすのでしょうね。代役として「子供の」エドで済ますのかしら??
S●Xシーンは描けないけど、ロイとのきずなは強調したいとしたら、どうなるのでしょう。楽しみ〜(笑)
でも、もはや「公認・男女の仲」は決定でしょうね☆








以上、今の段階での仮説として置いておきます!
問題は色々とあるんですが(…例えば、親が戦犯なんていう素性で軍に入隊するとき拒まれなかったか、と
か。グラマン中将の名前で何とかしたのかな)、でもかなり筋が通る部分もあるので、あくまで私見として
つぶやいてみました。タイトルは笑ってやって下さいねー。
もちろん、萌えの問題はまったく別の場所にありますので、よろしくお願い申し上げますv

長々とお付き合い下さいまして、有難うございました。(深々)




備考その1:陣の上部に見えるラテン語「Libera me」の文字について

気にならなくはないのですが、術の効果との相関関係はあやしいと思うんです。剣と魔法の物語ではないた
め、呪文のような効果は望めないのではないかな、と……(教えて下さった方、ありがとうございました!)

…と、一旦は考察打ち切りと思ったのですが後日に追記。
あのラテン語、G・フォーレのレクイエム第6曲『libera me 』から取られているんですよね。一度は「錬
成の効果とは関係ない」と思って見過ごしかけたのですが…
リザの背中にこの一節があるかはまだ未確認ですが(ルーペが必要;)、以下の歌詞が気になるんですね。

dum veneris judicare saeculum per ignem.
(天と地とが震え動く時、あなたは火をもって世界を裁くために来る)

ええ、「火」という単語が使われています。(名詞形はignes でいいですか?)
正直、ちょっと無関係とも思えなくなってきまして。
まるでイシュ戦にやって来たロイが「神の裁きの代行者」みたいにも受け取れるし、殺戮の犠牲者を火で浄
化して、せめて安らかに…との鎮魂の祈りにも受け取れますよね。
これはやはり錬成効果とは関係ないでしょうが、この詩句がリザの背中に彫ってあると思うと、なんかもう
意味深すぎて神々しすぎて触れない!!まるでリザって聖母の刻印押されてるみたいじゃありませんか?
libera me って、何から自由にしてほしいかと言えば「死の恐怖」なわけですよ。ぴったりすぎますよね。
あとは、ロイのためだとすれば「不当にあなたの命を奪ってごめんなさい」のような、その術の犠牲になる
人々への懺悔の意味とも受け取れる。まあ、そんなものが免罪符にはならないにしてもね。
…どちらにしても、「火」の一語がある以上、荒川先生があの詩句を錬成陣の一部として書いたことには意
味がありますね。
ロイはリザを抱くたびにイシュの傷を思い出すのかと思ったけど…むしろ抱きしめるたびに救われる気にな
るのかも知れないですよね。ほぅ…(萌えすぎて溜め息しか出ません。)5/10



備考その2:火傷で壊れているため、あの錬成陣から術は発動しないのでは

これは可能性は大ありだと思います。確かに、アルも鎧の血印を大事にしているし、66の時もわずかに陣
が欠けた途端に魂との仲立ち効果が消えたんですよね。ただ……「リザ=最終兵器」という設定がなんとも
かっこいいvvし、いつかアレを使うシーンを見たいvので、発動するといいな〜と思います。
(アルファキュート様、ご意見ありがとうございました!)


備考その3:「振り返れば眩しき日々」について

今になってふと気付いたのですが。もし、ロイとリザにとってイシュヴァールが「共に戦い抜いた」悲惨な
思い出だったのなら、そのあとの東方司令部時代というのはうって変わって気楽な、穏やかな時期だったの
でしょうね。部下とはいえ気の合う面々たちが一緒で、時には羽目をはずして飲んだり、グラマンおじいち
ゃまはああいう人だし、きっと戦時中にすり減らされた彼らの神経を癒したことだろうな、と。
だから、今回の大総統による飼い殺しで面々がバラバラになった件は、ロイリザの息抜き期間の終了でもあ
るような気がします。彼らの本来の戦いが、また始まるってことなのでしょうね。


備考その4:超今さらですけど

今さらもいいところですが、作品開始時からリザがハイネックを着用していたということは、今までのどん
な場面でもどんなイラストでも、荒川先生は「錬成陣込みのリザ」を念頭に置いて描いていたわけですよね。
それってつまり、最初からロイアイって「特別な仲」として描かれていた証拠ですよね?
そう考えたら、今まで必死に考察だのをしていた自分に疲れを感じてしまいました(笑)ううん、いいのv
彼らが腐れ縁でも何でもいいから、ずっと離れないでいてくれたらいいんですv






文責:鈴々
2006/3/14