◆錬金術師は孫娘の幸せを依頼された◆
**** ロイアイ考察・第4弾 ****
第4弾は、2005年4月発売のパーフェクトガイド2において
新たに明かされた血縁関係等の事実を踏まえ、
ロイアイ関係の再構築を試みたものです。
もちろんアニメ版は考慮に入っていませんのでごめんなさい。
1: なぜ、今?
今度ばかりは、さすがにその事実を予想し得た者は誰もいなかった。そして周知のごとくそれは、重要でも何でもな
いことのようにさりげなく、何の前触れもなく読者に明かされたのである。
ホークアイは、東方司令部将軍の孫娘であった……。
なぜ、作者はこの時期を選んで(あるいはこの機会を選んで)、この情報を開示したのか。プロ自らも同人業界で活
躍するケースが普通となって久しい昨今、いわゆる「ロイアイ」ジャンル内での彼らの扱われ方などは、作者も編集部
も当然知り抜いていたことと思われるのだが。
当サイトは開設当初より「相愛設定」を確信し、また布教に努めてきた(?)わけであるが、私見から言えばこれは少
数派に属するものであろう。ジャンル内での主流はやはり「苦しい一方通行」あるいは「すれ違いだが両方通行」といっ
たところであり、「相愛」は一つのドリームとしてとらえられているように見える。
そして、それらの根拠はすべて、「原作内に彼らの相愛を示す決定的な描写がない」ところに置かれていた。(当サイ
トはそこを覆すべく、「オトナの経験則」を活用し、この描写もこういう表現として受け取れるではないか?という考察を
ほどこしたい欲求から発足したのである。当初、イラストはおまけだった。)
しかし、今回の情報はかなりの決定打だったと思われる。何と言っても 「第3者の上位者」で、しかも「親族」でもあ
る、保護者にも等しい人物が彼らの結婚を望んでいるということは、ほとんど「暗黙の公式婚約」とも受け取れる状況を
示唆することになるからである。
孫娘……。それは、今まで「マスタングには政略的見合いが多いのでは」といった読者の悲観を呼んでいた6巻某シ
ーンを、「マスタングはホークアイとの未来を考えている」 というハッピーなシーンへと一気に塗り替える、文字通りの
「魔法の言葉」であった。これが6巻当初からの策略であったとしたら、作者はマスタング以上の食えない人物と言え
そうである。
さて、話は戻るが、それほどに効力のあるこの事実はなぜ、今という時期に公表されたのか。
私はやはり、今後描かれるであろう「マスタングの試練」に向けての布石として捉えたい。つまり、「強い絆とはどの
程度のものか」を明確にしておきたい理由があるはずだと思うのである。(付け加えれば、イシュヴァール編そのものも
「絆」の証明に一役買うものと予想する。)
そして、今回PG2において「明かされなかった」事実……すなわちマスタングの出自、マスタングの修業時代、ホー
クアイとマスタングの出会い、ホークアイがなぜ彼を守ろうと決意したか、等については、作者自身が本編で明かす用
意があるものと見てよいのではないか。
またホークアイの祖父については、わざわざ「母方の」と明記してあるのが若干気になるところではある。これはつま
り、東方司令部の将軍である彼はホークアイ姓ではないことを意味する。しかし、私はマスタングがこの血縁を知らな
いとは思えないのだが、いかがなものであろう。
まず、出会いから約6年以上もの期間、ホークアイがこの事実を彼に隠しているとも思えない。そしてそれ以前の問
題として、彼らの出会いそのものが、祖父将軍に関係の深い場所 (例えば軍上層部の主催するパーティーや式典な
ど)で起こった可能性はかなり高く、そうであればマスタングは彼女をまず 「将軍の孫娘」として認識したはずだから
である。
ただし、萌えの問題としては、祖父に関係のない場所で……例えば街中で酔漢にからまれたホークアイを、マスタン
グが救う (立場が逆ということもあり得そうであるが(笑))……などという出会いの方が、断然ロマンチックなのは確
かなのだが。
また、ホークアイの「父方の」祖父、あるいは父親はさらなる権力者である、という可能性も考えられるかも知れない。
そんな訳で、この血縁関係の露呈により、今まで「予想」にすぎなかった幾つかの事項が「ほぼ確定」へと昇格する
ことになると思われる。ロイアイ原作至上主義の精神にのっとり、私はここで今までの拙考察をさらに精密度の高い
ものへと引き上げる努力を試みたい。そこで、以下は今となってはもはや初々しさのただよう
考察第1弾と比較して
書いてゆくことにする。
2: 出会いについて
第1弾ではイシュヴァール戦の6年を含め、作品中時間で約7、8年前頃に2人の出会いがあったと推定した訳だが、
どうやらそれは修正の必要はなさそうである。ただし、ホークアイがその「出会い」からマスタングの副官に任官するま
でにどれほどの時間を費やしたのかについては、まったく手がかりがない。彼女がマスタングを「守るべき人」と心に決
めてから士官学校に入ったとして、佐官の副官という地位を得るまでに、どれほどの時間が必要なものなのだろう……
残念ながら不明である。万が一、ホークアイが士官学校を経ず、祖父の力を借りて「裏道」を通ったのだとしても、まさか
何の訓練や研修期間もなく尉官の地位 (あるいはもう少し下の階級か)に就けるとも思えない。
ただし、彼女が他の誰でもなく「マスタングの」部下として配属された人事については、偶然ではないと予想する。マス
タング自身がそれを望んだのかどうかはともかく、ホークアイの必死の懇願が彼女の祖父を動かさなかったとは考えられ
ないからである。
また、大胆な予想だが「2人は幼なじみであった」という可能性も捨てきれないであろう。
ただ、ホークアイにいくら才能があったとしても、幼少時から射撃が得意だったとも考えにくく(輪投げくらいは得意だっ
たかも知れないが)、そうなると「守りたい」という根拠が薄弱となるのである。逆に言えば、射撃の腕に自信がなければ
「彼を守るために」ホークアイが軍人を志すこともなかったのであり、彼女の尋常でない射撃の才能が際だってくる年頃
を考慮すれば、やはり十代後半というあたりが無理がないように思う。無論、ホークアイはその決意ののちに更なる訓練
を積み、ますますその腕に磨きをかけたことであろう。
もう一つ興味深いのは、ホークアイが命を賭してマスタングを守ろうと決意した、当の理由である。愛に理由はないと反
駁されてしまいそうであるが……もしかすると、ホークアイには愛以外にも動機があったのではないか。つまり、マスタン
グが目的を果たすことが、ホークアイの目的にも適う、といった状況もあり得ると思うのである。それは例えばウィンリィの
ように、身内が何らかの形で(間接的に)大総統ブラッドレイの犠牲になった、等の状況が考えられよう。もちろん現時点
では完全に憶測の域を出ないが、このあたりの事情もイシュヴァール編によって明かされることを期待してやまない。
3: 愛の進行度について
この項目についても、「婚姻関係でないだけで、メンタリティーは夫婦(家族)と同等」と推定した第1弾での結論に変わ
りはなく、ほぼ確定的とみてよいと思う。むしろ連載の回を重ねるごとに、そういった表現では甘すぎる、説明し難い関係
を感じとれるようになってきている。
「恋人同士」では、もはや甘すぎるであろう。新婚の夫婦並み、などという他人行儀なレヴェルでも絶対にない。兄妹か、
それ以上……血を分けているように思えるほどの結びつき……何と形容すればよいのだろうか。互いに互いの身体を、自
分のもののように使いこなせる、2人だが1人のような……まさしく「半身」と呼べる存在に限りなく近いのではないか。
私はすでに、肉体関係の有無なども問う気にならなくなってきている。こういったペアにとって、セックスはもはや会話と
同じだからである。それは決して「ロマンチックな関係が慣れすぎて色あせた」 結果ではなくて、愛が肉体的なレヴェルを
超えていってしまった証なのである。そうなると、もはや「言葉にできない思い」よりも「言葉にする必要のない思い」の方が
大勢を占めてゆき、2人は2人で人間の「1単位」となってゆく。
それは、通常では到達できない男女の姿かも知れず、どちらかが欠ければもう一方も存在の意味を失うほどの、恐るべ
き一体性を感じさせる。
マスタングの目的のためにホークアイが奮闘する姿は感動的であり、読者の胸を打たずにはおかない。しかし、上に述
べた理由によって、彼らの両方ともそれを「献身」とはとらえていないのではないか。彼らは一緒に一つの生を生きている
のであり、どちらかがどちらかのために「尽くす」という観念そのものが、すでに無いのではないかと思われる。
ただし……繰り返しになるが、萌えの問題はまったく別の所にあることを忘れないでいただきたい(笑)。
4: 愛の行方について
この項目についてはいささか考えさせられる。
考察第一弾においては、マスタングは軍の全権を握ったのちに(恐らくは軍の外に執政機関を置き、法の改定などを済ま
せたのちに)野に下り、民間錬金術師として愛妻(と愛犬)とともに末永く幸せに暮らす……という桃色未来予想図を展開し
てみたわけであるが、第10巻における記述によってこの図にも暗雲がたちこめつつあるのが現状である。
その記述とはもちろん、大総統ブラッドレイによる「扉を開けさせる」という発言を指す。
何とも不気味なこの発言の真意は、マスタングを錬成陣なしで術を使える術師に仕立て、彼らの言うところの「人柱」とし
て利用しようというものであるが、ご存じのように「真理」を見た者は代償を支払わねばならず、マスタングが一体何を支払う
羽目になるのか……それを考えただけで食欲も落ちようというものである。
PG2における作者の言によれば、「捨ててゆく」ブラッドレイと「捨てられない」マスタングは、意図的に対比させてあるとの
こと。そして10巻でのブラッドレイのセリフ、「彼は優しすぎる」「兵力を削ぐ」等を合わせて考えれば、今後ホークアイの身辺
が危険なことは明らかすぎるように思われる。読者としては、どうにか2人とも無事で、一旦は試練に飲み込まれたとしても
最終的には彼らが幸せを得られるように、ただただ祈るしかないところであろう。
今回の「孫娘」効果によって、マスタング自身の未来図の中にも、「今はまだ気が早すぎるが」結婚のことはきちんと描か
れていると判明したわけだが、現時点での彼らはまだ、到底そこまで思いを馳せる段階にはなさそうである。
否、もしかすると……「結婚」などという通俗的な未来よりも、彼らはもっと高い所を見据えているのかも知れない。我々が
普通に想像するところのプロポーズなどよりも、彼らがかつて交わしたはずのやり取り……「付いてくるか?」「はい!」の
方が、はるかに強固な約束であったのかも知れず、それは時間の軸の上で永遠に消えない焔となって彼らを結びつけてい
るに違いないからである。
とはいえ……だからと言って、あの老将軍が彼の理解の及ぶ範囲での「女としての幸せ」を孫娘に望んだとしても、我々
は決して彼の無知を哀れむべきではない。なぜなら傑出した者を助けるのは、その完全な理解者だけとは限らず、時として
ごく普通の人々の純粋な好意であることも多いからである。そして何よりも、他でもないマスタング自身が老人を寛大に思い
やり、その申し出を偽りのない態度で受け止めているのを見て、我々もまた心あたたまるのである。
孫娘の幸せを依頼された錬金術師は、今後どのようにそれをかなえてゆくのか。
それは、彼の行う最大の錬成となるだろう。
2005/5/21
文責:鈴々