◆その時、足蹴りはどのようにして可能だったか◆

**** ロイアイ考察・第一弾 ****


ロイアイ語りです。
いきなりですがシャーロッキアンのガチガチ論法でいってみます。
ただし管理人はアニメ版を一度も観たことがないため、
ほぼ原作のみ(コミックス1〜8巻)の情報に基づいて
書いていることを最初におことわりしておきます。
これぞロイアイ原作至上主義です(笑)


1: 2人の年齢について

 設定ではロイ・マスタング=29歳ということだが、初登場時こそ年齢相応に見えた風貌も、巻を重ねるにつれて到底「若造」とは
呼べない渋みを匂わすようになってきている(猫ヒゲの有無は考慮の対象外として)。職場での部下の動かし方なども堂に入った
ものであり、もはや私には30代手前とは見えなくなっているというのが正直なところである。30、という数字を「既婚か否か」という
観点から気にしがちなのが女性なら、男性の場合は主に「人生をどれほど登りつめたか」「何を成したか」という観点から気にする
ように思われる。(いまや時流から外れた見解かも知れないが。)しかし、ロイ・マスタングにはそのような焦燥感は感じられず、む
しろ確信をもって着々と野望を引き寄せている者の持つ「余裕」さえ見て取れるのである。ゆえに、私としては若く見積もっても彼
を33〜35歳前後と考え、今後の2次創作(予定は未定)に反映してゆくつもりである。

 一方、リザ・ホークアイの年齢はどの程度が妥当だろうか。単純にマスタングとの年齢差で考えるなら、2〜3歳下、というのがあ
りそうな線ではある。しかし、彼らは作品中時間で13年前に勃発したイシュヴァール戦を「共に戦い抜いている」とのことであり、も
しこれが「最初から最後まで」という意味であれば、彼女は10代ですでに軍役についていたことになってしまう。ただし、国家錬金
術師が投入されたのは勃発から7年後(6年前)ということであるから、この前後でマスタングと行動を共にし始めたと考えるなら、
当時は20代前半という計算になり、つじつまは合うように思う。
 個人的な興味を優先して言えば、私は俗に崖っぷちなどと敬遠される「女の29歳」という年齢をあえて彼女に当ててみたい。それ
はデリケートかつ微妙なバランスの上に成り立つ、人生でも特別な時期だからである。20代を振り返る思い、そして未来への思い
が錯綜する。作品中のホークアイの場合、愛する男も自分も今は将来を考える余裕がないというある種の不安、そして同時に「目
的のために共にある」充実感をも味わっているに違いない。そのストイックな性格から、年齢の問題などは彼女の意識にも登らな
い些末な事項ではあろうが、意識を超えた所で状況と闘っている女性は美しいという一つのの見本として、私はあえて彼女にこの
数字を当てはめてみたいのである。


2: 出会いの時期について

 彼らの出会いがいつ頃か、という問題について、作中における手がかりはほぼ皆無と言ってよい。ただ作者の発言として、例の
イシュヴァール戦を「共にくぐりぬけた」という情報が伝わっているのみである。先の考察の通り、マスタングがこの戦役に加わった
頃を「出会い時期」とするなら、作品中時間で約6年前ということになる。しかし、作中でのホークアイの言動を吟味してゆくと、それ
ではいささか付き合いの期間が浅すぎるとも思えるのである。彼女のマスタングに対する言葉の数々、例えば「貴方」という呼称
や「お守り」という表現、そして何のためらいもなく繰り出された足蹴りと、「無能」という卑下的単語を相手のダメージを気にせず口
に出せるあたりを鑑みても、上司部下の関係はもちろん、「恋愛関係」さえも遙かに超えた親密さを感じずにはいられない。
 無論、愛が育まれてゆく時間とその深さとの間には比例法則などない。(むしろ「戦闘下」という特殊な環境のもとでは、瞬時に
深い相互信頼が生まれても不思議はないかも知れない。)しかし、もともと他人である者同士がここまで慣れ親しむには、6年間よ
りもいま少しの期間が必要なのではないか……というのが私の見方である。よって、ここでは6年の他にさらに2年ほどを付け加え、
2人の出会い時期と予想したい。


3: 愛の進行度について

 これは私にとって単純にはいかない考察である。なぜなら、作品から読みとれる実際の彼らの仲と、2次創作の上での「好み(萌
え、とも言う)」の問題とが矛盾を引き起こすからである。作品内に散りばめられた、彼ら2人の親密度を示す数々の証拠から類推す
るに、彼らは「恋愛中」と呼べる状態よりも二歩か三歩は進んだ間柄だと考えられる。つまり、相思相愛を毎日確認し合うといった恋
愛初期の早春のような状態はとうに卒業していると思えるのである。肉体的関係の有無を問えば愚問となるだろう。彼らはれっきと
した大人である。しかし、何よりもマスタングの「野望」という目標が彼らを深く結びつけているために、彼らにとってはそうした愛の行
為もさほどの重要性を持たないのかも知れないが。(と言うより何より、そんな時間はなかなか取れないようにも思える。)
 さらに、前項でも述べたマスタングに対するホークアイの言動の数々が、有力な手がかりとなるだろう。通常、人は他人と親密な間
柄になるほどに、互いをマイナス視した発言も「大目に見る」ようになるものである。特に恋人間でのそれは「じゃれあい」に近い一種
の遊戯であり、その程度で互いの信頼は失われないという確信のもとで、相手の弱点をつつくのが暗黙のルールとなる。しかし、「無
能」という言葉の持つ衝撃性はどうであろうか。このレヴェルまで辛辣な表現を許容できるとなれば(もっとも、マスタングは多少の立
ち直りの時間を必要としたようではあるが)、これは並はずれた間柄と言ってよいのではないか。これはもはや、「恋人同士」を超えて
「肉親」に近い慣れ具合ではないか。つまり彼らはいま、恋愛をサンドイッチにした「兄妹」の間柄に近いのではないか……と私は類
推するのである。限りなく「兄妹」に近い彼らの信頼度こそ、あの場の足蹴りを可能にした原動力であるに違いない。

 一方、2次創作上での「好み」の問題はまったく私の主観的なものである。とにかく、「ロマンスの醍醐味はくっつくまでの紆余曲折」
というのが私の力説するところであり、くっついてからの現実的実質的なあれこれは、赤の他人としてどうでもよい、というのが私の本
音である。つまり彼らロイ・マスタングとリザ・ホークアイの場合、2次創作上は「あまり慣れ親しんでもらっては困る」のであり、時には
「すれ違ってほしい」などと願うこともあり得るのである。また、軍という職場には大いに2人の障壁となってもらいたいし、夜勤や非番
や仮眠室や執務室には通常の役割を超えて活躍してほしいとさえ思う。その結果、彼らのピロートークが多少しんみりしたものとなろ
うが、彼らの行動がラブコメそこのけの滑稽さを帯びようが、私としては全く大歓迎以外の何物でもない。なぜなら……彼らは作中に
おいてすでに「相愛の幸せ」を得ているのであり、一ファンがどのような意地悪な妄想を抱いたとしても、到底その幸せには指一本触
れられないと分かっているからである。



4: 愛の行方について

 この問題については、残念ながら「希望的観測」以外の何物でもなくなってしまうのが辛いところである。しかし、いくばくかのヒント
が作中に示されていないこともない。
 それは、6巻の過去回想におけるホークアイのセリフである。「軍人は好きではない」に始まるウィンリィとの会話から推し量るなら、
彼女は「守るべき人(=マスタング)」が軍にいるために軍人になったと考えても良さそうなのである。しかも、「その人が目的を果た
すまで引鉄を引く」という、微妙な言い回しを使ってさえいる。これは言い換えれば、「その人が目的を果たせば軍をやめる」という迂
遠な表現とも受け取れる。このセリフからおぼろげに見えてくるものは、天才スナイパーとしての彼女はもしや、「仮の姿」なのでは
ないか、という疑問である。もしかすると……彼女の本質は「戦の女神」などではなく、もっと年相応の恋するナイスガールなのかも
知れない。(あくまで仮説の域を出ないが。)
 仮にそうであった場合、彼女はマスタングが目的を果たした後はどのような道を選ぶのだろうか。最も自然な成り行きとして、大総
統夫人という選択肢がまず浮かぶ。だが、彼女自身は取りあえず軍を辞するとして、もともと「軍人は好きではない」彼女がこれ以上
軍の関係者と一緒に生活したいかどうか、という点は微妙なように思う。だからと言ってマスタングが彼女を手放すとも考えられない。
もしも……ホークアイが「軍をやめてほしい」とマスタングに願った場合、彼はどちらを選ぶのだろうか。地位か?結婚生活か……?

 それ以前の問題として、マスタングは本当に大総統として国を治める気があるのか、という疑問も存在する。彼が現総統ブラッドレ
イの政権を覆すつもりである、というのは明らかであるが、その後の段取りまで考えているのか否かについては全く不明である。確
かに「大総統の地位をもらうのは私個人の意思だ」等の発言は認められるが、一方で軍属の国家錬金術師の卑称「軍の狗」を自ら
使い、エドワード・エルリックには自分の野望を知られるままにした上、「(資格を維持するために)大総統への忠誠心無しと見られ
ないよう気を付けろ」などと共犯者めいた助言を与えてさえいる。「利用できるものはすべて利用する」と公言する男は、やはり軍そ
のものも単に利用しているにすぎないのではないだろうか。つまり、彼は「軍の統治権」を望んでいるわけではないのであろう。
 そう考えるならば、目的を果たした後に彼が野に下る可能性は大いにあると言えよう。ここから先はほとんど妄想にすぎないが、
いつか2人がごく普通の家庭を持ち、民間の善良な(?)錬金術師と料理のレパートリー増やしに奔走する可愛いミセスとして、そ
れぞれ生きてゆく、などという結末は……どなたかの支持を得られるであろうか?


文責:鈴々