ラスボスをめぐる考察2



◆ラスボスをめぐる考察その2◆




**** パーフェクトガイド3を足がかりに ****


※コミックス未収録部分のネタバレを含みますのでご了承下さい。



この考察は、拙筆『ラスボスをめぐる考察』以降に新しく得られた情報、中でもパーフェ
クトガイド3におけるセリム=プライドの情報と、本誌第101話(2009年12月号)における
ブラッドレイ親子の巧みな共闘、その2つを参考に新たに気付いた点をまとめてみたもの
です。
大変恐れ入りますが、先のラスボス考察の内容についてはここでは繰り返しません。もし
お差し支えなければ、そちらを参照しつつ楽しんで頂けますようよろしくお願い申し上げ
ます☆



パーフェクトガイド3における、プライドに関する新たな情報

ラスト間近ということで、ここに来てプライドとフラスコに関する新たな重要情報が満載
されていたパーフェクトガイド3でした。
閣下親子の微笑ましい小ネタに始まり、「これで結末を予想しなさい」と言わんばかりの
重要な初耳情報まで、あれこれあれこれ…(笑)
以下、ラスボス考察と関係のありそうな部分を抜き書きしてみますと。。。

1:フラスコは生まれながらに錬金術の知識を持ち合わせていた。
2:フラスコはクセ国最期の日、自分自身を人体錬成した。
3:術師が扉を開けると遭遇する真理とは「生命誕生の記憶(つまりDNA情報だと思わ
れる)」である。
4:扉は開ける者の数だけ存在し、その持ち主にしか開けられない。
5:命ある者に必ず存在する真理の扉だが、ホムンクルスには扉は存在しない。
6:フラスコは真理の扉の向こう側から来た存在である。
7:セリムの身体はほとんど傷つくこともなく頑丈で、その構成物質は謎。

ざっと見ただけでもこれだけの新情報があります。
特に7については、「ラスボスはお父様とセリムのどちらなのか」という疑問に対する大
きなヒントになるように思われます。
ガイド3のP141には、さらに「これほどまでに堅牢な容れ物を構築している理由は謎」と
いう意味深長すぎる記述があるわけですが…ごく自然に考えれば、誰であれ最も大切なも
のは堅牢な金庫にしまっておきたいものですよね?
そういう意味では、この記述によってラスボス=セリムの可能性はまた一段階上がったと
言えそうです。(ラスボスの定義については先のラスボス考察をご参照下さい)
ただし、ここまで来ても単純に「お父様はセリムの傀儡」とは断言できません。
お父様がラスボスではあるけれど、「心臓部分」「自分の中枢」だけを取り出してセリム
の中に「保管」している、とも考えられる。どちらにしても、ラスボスの管制塔であり、
本質であり心臓部分なのはセリムの中身、だというのはほぼ間違いないと思います。

また、これはラスボスとは直接関係のないことですが、1と2「フラスコは生まれながら
に錬金術の知識を持ち合わせていた」「フラスコはクセ国最期の日、自分自身を人体錬成
した」というのも新たに確定した重要な新情報ですね。その人体錬成の際にフラスコが使
ったのは自分の中の「ホーエンハイムの血」だったわけですから、その「血の情報」によ
って開いたのはホーエンハイムの扉であり、だからこそホーエンハイム自身もフラスコと
同時に自分自身の人体錬成を行ったことになってしまった…という解釈が成り立つのでは
ないでしょうか。
そもそもこの世では「同じDNA情報を持つ他人(一卵性双生児を除く)」の存在はあり
得ませんが、ホーエンハイムとフラスコだけは(フラスコは人じゃないけど笑)そのあり
得ない例にあたるのだと思います。




101話の閣下親子を検証する

さて、そして話は飛びますが最新の101話です。
人柱の最後の1人であるロイに扉を開けさせるため、あらかじめ筋書きが用意されていた
としか思えない手際の良さで動き回るブラッドレイ親子…。
この初めての「親子共闘」の図を見てすぐさま思い浮かんだのは、あの12巻での親子の会
話でした。あの違和感、「お父様に対して秘密を共有している」という空気、それがフラ
ッシュバックしてきたんですね。
(そもそもプライドの登場シーンからしておかしい(笑)。この忙しい展開の中で、ああ
までしてページを割いてアップのコマを連続させなくてもいいではありませんか?でも、
内容的にそこまでしなくてはならない理由があったわけです。それは恐らく、「真打ち」
の登場シーンだから。セリムこそ真打ちだから、だと思います)
注目すべきはまず、プライドが閣下の「再生しない傷」を見ても何の反応も示さなかった
こと。つまりプライドはそれを以前から知っていたわけですね。閣下の中の魂が1つのみ
であることを、です。
ということは、プライドは閣下を「こいつの魂は人間なのでは?」と監視していたのでは
ありません。逆です。「プライドの真の協力者」こそ、閣下1人のみだったということで
しょう。

「お父様に対する秘密の共有」ということで言えば、もう一つおかしな点があります。
それは「錬丹術について兄弟が調べている」という伏線が今もって生かされていないこと。
その情報がプライドから閣下へと伝わったことは分かりますが、閣下とプライドからお父
様の耳に確かに伝わったという描写が皆無なのです。
お父様がラスボスであれば、この点について牛先生が描かないはずはないと思われますよ
ね。なぜならこれは人間側が「逆転錬成陣を用意している」ことへとつながる大事な情報
なのですから、忘れていたとすれば痛恨のミスです。でも、先生にミスはあり得ません。
ということは…?
「描かれていないこと」すなわち「情報が閣下とプライドのところで止められた」ことこ
そが伏線である、という解釈が成り立ちます。ここでもまた、2人はお父様に対して秘密
を共有しているわけです。
そして101話。ここまで周到に、息の合いすぎたプレイでロイをあちらへと送ってみせた2
人の計算とは、やはり「逆転錬成陣を発動させるため」としかもう考えられないのでは…

以上のことから、(先のラスボス考察でも書いたことですが)ホムンクルス兄弟は実は一
枚岩ではなく、「お父様とその忠実なしもべのホム4人」と「彼らをあやつるセリムとそ
れに協力する閣下」という、2つのグループがある…というのはもはや確実なように思い
ます。無論、すべての黒幕はセリム=プライドです。
その「構成物質さえも不明」な、血も流れていない、誰も破壊できないほど堅固な「容れ
物」に入っている理由は、やはりその正体がラスボス本体、この計画の発案者だからでし
ょう。




では、ここでもう一度ラスボスの目的とは?

しかし疑問点はまだ山積みです。お父様の言う「完全な存在になりたい」というのがフェ
イク(プライドにとっては)だとすれば、ラスボスの真の目的とは一体何なのでしょう?
そもそも「逆転錬成陣を発動させるため」にロイを人柱にしたのだとすると、そこですで
に矛盾が生じますよね。人間という生き物の存亡危機を作りながら、大逆転のチャンスも
また与えたことになるわけですから。
以下、思いつくままに考えられる可能性を羅列してゆきますと。。。

1:先のラスボス考察で考えた通り、プライドの目的は初めから「完全な存在になりたい」
だった説。お父様は単純におとりであり、101話で5人目の人柱のロイをあちらへ送り込ん
だ後、プライド自身も日蝕の「その瞬間」に国家錬成陣の中心へと出向き、目的を達成す
る予定…ということですね。
ただ、そうなるとプライドたちはすでに「逆転錬成陣」への対策を立て済みであるか(描
かれていませんが)、錬丹術の情報だけでは「逆転錬成陣」の存在を知ることはできなか
った、ということになります。それも変ですよね…。

2:ラスボスがやはりお父様だった説。「完全な存在になりたい」というお父様を何らか
の理由でプライドが阻止したいと思い、閣下を唯一の協力者として長い間人間側を「支援」
してきた、という説です。
しかし、それならプライドの見せるあの残忍さは説明できませんし、森で言った「やはり
人間は取るに足らない存在なのですね」という言葉は矛盾しますよね。

3:「すべては実験」説。いつかゾルフが語ったのとまったく同じ理由、「どちらが生き
残るのか見てみたい」という興味から、これほどの大がかりな計画を進めてきた説です。
進化論の実証のために一つの国を建国からずっとやってきたというわけですね。
これは丸っきり説得力がないわけでもありません。セリムは明らかにあの時、「結果を見
たい」というゾルフの望みをかなえるべくまだ息のあるうちにゾルフを吸収したのですか
ら、「偶然にもゾルフの望みがラスボスの目的と一緒だったから」という可能性がないわ
けではないと思います。

4:ラスボス=プライドは単に自分が人間になりたいだけ説。
つまり「人間側を支援」云々は管理人の勘違いであり、お父様の目的「完全な存在になり
たい」もフェイクであり、最初からプライドは「自分も人間になりたい」と思って大がか
りな計画を進めてきた、という説です。
ただし、人間になろうという者が「やはり人間は取るに足らない存在なのですね」とは言
いませんよね。他、どういう角度で考えても、やはりプライドが「人間側の味方である」
とは到底思えない部分が多すぎます。

うーん、問題はやはり閣下の立ち位置、ということになりそうですが…




再び、閣下の立ち位置は?

どう考えてもラスボスの目的が「人間のためになるものではない」以上、「人間滅亡」か、
ぎりぎり妥協しても「人間はどうなってもいい」程度の認識である、ということになりま
すが…それでも管理人は、閣下だけは人間側の味方だという信念を捨てきれません。
ですから、物語がここまできた現在でもなお、先のラスボス考察 の中の最後の章「そう
なると、閣下の立ち位置は」で述べた通り、閣下の願いは「セリムという1人の人間の子
供を奥さんに残すこと」なのではないかと…思えてならないのですが。(それが無理なら、
せめて自分の愛した子供が正体不明の化け物だと彼女が知る前に葬ろうとするか。これは
難しいところですよね。真実のすべてを彼女に明かす方が「誠実」なのか、それとも良い
思い出をそのままに壊さない方が優しさなのか。私は閣下に「妻を泣かすな」などと簡単
には言えません。そんなことは当然、最大限に考えてきた閣下だと思いますから。そうし
て色々な苦渋の末に「これが最善だ」と選んできた道こそ、いまの閣下の生き様だったと
信じていますのでv)

あるいは、閣下が最後に裏切るのがお父様ではなくプライドだとすれば、閣下が「人間側
を救うためにも利害が一致する」からこそラスボス=プライドに協力してきた今回の計画
も、101話をもってその利害関係が終わることになるわけです。
とすると102話以降、日蝕の「その瞬間(皆既状態)」に際して、閣下はプライドをどうや
って押さえるのか…。それとも最後に最強の「おかあさん(閣下夫人)」が地下に駆けつ
けてきて、彼女が物理的にではなく、ラスボスの魂の方へと訴えかける可能性に賭けてい
るのでしょうか。

もはやこれ以上の推測は不可能。牛先生の用意して下さる「救い」の展開を、全身全霊を
こめて見守るしかありませんね(苦笑)




セリムが人間になるには(ピノキオ説補完)

最後に、先のラスボス考察で書いた「セリム=ピノキオ説」の具体的な実現方法について
を考えて終わりにしたいと思います。
パーフェクトガイド3によって明かされた新情報(上記抜き書き)を手がかりとしますと、
おぼろげながらセリムが真の人間となるための諸条件が分かってくるような気がします。
(いや別に人間になりたいわけじゃないかも知れないんですが笑)

まずはフラスコが「個有の真理の扉を持っていない」ことが重要ですね。それはイコール、
「この世の生物すべてが持つDNA情報、二重螺旋の情報を持っていない」ということ。
DNAは文字通りの「命の鎖」で、地球上にアメーバのごとき生物が誕生して以来、途切
れることなく次世代の子孫へと受け継がれてきた生命の記憶ですから、ラスボスがもしも
「人間になりたい」と思い立ち、いきなりそこに割り込もうと思っても「横はいりは不可
能」なんですよね。人間になりたいのであれば、個有のDNAを持たねばなりません。
けれども、フラスコの所有するDNA情報はホーエンハイムのもの…。
では、どうやったら個有のDNAを持てるのでしょうか?

ここで注目したいのが「お父様が疑似真理の扉(グラトニー)」を作ったこと、つまりは
ラスボスが「個有の真理の扉」を持とうと試みた事実です。
もちろんこれは個有のDNA情報を持たない者には不可能だったわけですが、これが失敗
に終わったからこそ人柱を使った今回の計画へと方向転換した、と考えると色々な辻褄が
合うんですよね。
扉の向こうから来た存在でありながら、今さら扉を作ってどうしようというのかは分かり
ませんが、「ラスボスが個有の真理の扉を必要としている」のはほぼ確実でしょう。

しかし、先ほど言ったように二重螺旋の鎖の中への「横はいり」が不可能である以上は、
個有のDNAを持つことは無理です。従って、「新しく人間の子供として生まれる」か、
「すでに存在する人間とすり替わる(肉体に魂を定着させる?)」しか人間になる方法は
ありません(鋼世界においては)。
要は事実上不可能、ですね。
ただ一つの可能性は、その血の情報の出所であるホーエンハイムの肉体に「戻る(?)」
ことによって同体化すると言いますか、元に戻ると言いますか…それをもって「人間にな
る」と表現することができる…かも知れませんが…。

不思議なのはセリムの「容れ物の情報」がどこから来たのかという謎ですが、それは恐ら
く約300年前のどこかの子供のものか?…としか想像の仕様がありませんね。
もしもその情報をもとに、賢者の石の力で「セリムの肉体」を再生することができるなら、
あるいは「ほぼ人間?セリム」のようなものができる…のかも知れません。
しかし、そのような解決方法でラスボスの計画がすべて潰れ、元通りの正常な世界に戻る
のかどうかは分かりませんが。

すべては牛先生が、元フラスコの存在を絶対悪と描くか、それともそれすらも「人間の魂
から生まれたもののうち」として、最終的には世界がそれを包容する方向へと描くのか…
その点にかかっていますね。
ほんとうに一日千秋の思いで、そして願わくば元フラスコにとっても救いとなる結末を、
切に切に祈るばかりです。




以上、未だ結論まで至らぬままですが、101話時点でのラスボス考察としてここに置いてお
きます。
ここまで読んで下さった皆さまありがとうございましたv
(そして貴重なご意見をお寄せ下さったnono様に感謝いたします!)


文責:結城鈴々
2009/12/9