閣下夫妻SSS
- 我が長き友へ -
朝のこと。
行ってくる、と言って家を出ると、あなた待って、と彼女が呼び止めた。
ん?と振り返ると、少し頭を垂れてくれと言う。
言う通りにすると、何やら私の頭を触っていた彼女が「あ」と声を出した。
「おいおい、何だね?」
「ええ…ちょっとだけ。ごめんなさいあなた」
何が?と問う間もなく、小さく鋭い痛みが頭部に走った。
「…ぃたたっ」
「はい、抜けました」
見れば、彼女は得意そうな表情で白髪を1本つまんでいた。
「私の?ほう…気がつかなかったな」
「うふふ。一瞬だけ朝日に反射したのよ。年だわねぇ」
「まったくだ」
用心深くそれを受け取り、日に透かして眺めてからふぅっと息で飛ばした。
さらば、本当の私のかけら。
賢者の石から自由になれておめでとう。
「でも…あなたは少ない方よ。きっと私の方が先に真っ白になるわ」
「なんの。10年先はわからんさ」
「じゃあ競争してみる?」
けらけらと手を振る彼女に、行ってくるよと笑いかけた。
白髪競争か…なるほど。
夫婦にはそんな楽しみもあるのだな…
渡り廊下を歩きつつ、私はほころぶ頬を引き締めるのに必死だった。
- Fin. -
まだセリムがいなかった頃の、出勤前の一コマ。
閣下が最後に真っ白髪になっていたのは、賢者の
石の力を使い果たしたせいですよね。それまでは
ほんとに若々しかったので、こんな会話もあった
かも・・・と捏造してみましたーv
髪は長〜い友達(お若い方はCMご存じないかな?
髪という漢字をばらしてみてね^^)というのと、
奥さまが人生の友、というのを掛けてみました☆