若閣下SS

- A Cup Of Love -





金褐色の飲み物をすすると何かホッとする。

…成分と作用の因果関係を考えると理不尽なのに、不思議なものである。
すでに人間ではなくなった身体とはいえ、日常生活に2種類の飲み物が
ついて回るのは世の習いだから今までと変わりない。
が、その2種類のうち断固として泥色の方を避け、金褐色の方を選ぶ。
それだけの選択ができるうちは、自分もまだまだ人間らしさを失っては
いないんだ!と彼は嬉しく思った。
…思ってからすぐに己の小ささに少し落ち込んだ。


軍服を着ていない時の自分は、どうもすべてに頼りない気がする。
だから初対面の女性に不覚を取られたりもしてしまうんだろう。


「…!」
紅茶にうつった自分の顔を見て、彼は急に勢いよく立ち上がる。
小走りに洗面所の鏡にたどりつき、勢いこんでのぞいた頬からはしかし、
すでに手のひらの跡は消えていた。
念入りにそれを確かめてから、彼はよく分からないため息をつく。
戻ってきたテーブルの上で待っていた紅茶の湯気は、少しばかり切なく
感じられた。


(…もったいなかったな)


ふとそんな感想が浮かんで、彼は自分の心に大いに驚く。
…いやそれはないんじゃないか?
盛大に鳴ったのが自分の頬だと気付いた時には、もう彼女の姿はそこに
なかったのに?
呆然とその場に立ち尽くす自分に残されたものは、深い心理的ショック
とほっぺたの赤い手形だけだったのに?
そんな出来事の何がもったいないんだ私は!マゾなのか!?
けれどその答えは、巧妙にもティーカップの中に落ちていたのだった。



…思い出した。
ひるがえった彼女の髪は、紛れもないダージリンの色をしていたんだ。





- Fin. -





ビンタ姫と眼帯王子、若夫妻の初ビンタ後を捏造してみ
ました。が、なかなか動かしづらくて難しかった;
鳥かごの中で育って人造人間にされ、友人も地位も何も
かもが用意されていた若閣下にとっては、偶然の出会い
って新鮮だっただろうなと思います。ましてその相手に
初対面でひっぱたかれたなんて、そりゃそれまでの人生
で最大のインパクトだろうなーと(笑)だから気になっ
て気になってもう一度会いたいと思ってしまった…とい
うあたりのモヤモヤを書きたかったんですが;;
ビンタされた理由は他サイトさまにおまかせ致しますv
しかし鋼の男性陣は一目惚れ型が多いなぁ。しかもM。
でもたとえ女にメロメロでも全員が超漢前だからいいで
すけどねv それってもしかしたら女から見た「都合の
良い男性像」なのかも知れませんが(笑)