イシュヴァラ。
恐る恐る吸いこんだ風に、血のにおいはもう混じっていなかった。
「大佐…」
「ん?」
「あの頃の…8年前の空の色を覚えていますか?」
「いや…何も記憶にないんだ…」
「私たち…本当に気がふれていたんですね」
「ああ…真実は何も見えていなかったんだな…」
息も止まるほどの壮大な夕陽が彼ら4人を包みこんでいた。
流転する人間たちの世をよそに、
空と大地はあの頃と同じ営みをずっと繰り返していたのだ。
「初めて見る…。これがイシュヴァールか…」
「己れも忘れていた。なぜ忘れることなどできたのだろうな…」
まだ遅すぎはしない。
この手でできることがある…
目を閉じれば、頬を伝う前の涙を風が吹き流してゆく。
声を放って泣きたい思いをこらえつつ、
リザは生まれて初めてその異国の神の名をそっと口で唱えた。
ロイの耳だけに届いたその名は、彼らの罪もろとも彼らを懐に包みこんでいた。
15巻で閣下が背にしていた夕陽もこんなだったのかな…。
完結後未来考察に寄せまして☆(2010/12/9)
