手のひらの上の未来




「オレのこと覚えて……ないよな、ごめん」

金色の瞳を申し訳なさそうに細めて、彼は自分の頭をぽん
と叩いた。

実に多くの人びとが、僕の顔を真剣に見つめてから同じよ
うな反応を示す。
ずっと昔に一度会ったことがあるんだけどね、と言って。
大人とはそんなものだろうか。


「母が教えてくれましたが…小さいころの僕は、あなたに
憧れていたらしくて」
「ん?ああ…。そういえば錬金術師になりたいんだとか、
昔言ってたっけな」
「まだ国家資格制度があったころ、あなたは史上最年少の
国家錬金術師だったそうですね」
「まぁな。でもオレ、今はもう術を使えないんだ」
「知ってます。でもそれでもあなたは天才錬金術師だって
みんなが…」
「誰だよ“みんな”って」


金髪の三つ編みを揺らして、彼は屈託なくわははと笑う。
その顔はまだ若々しく少年めいていて、僕とあまり変わら
ないのじゃないかとさえ思える。
ふと、会った最初からずっと言いたくて言い出せなかった
ことを今なら言ってしまえる気がした。


「あの、エルリックさん」
「エドでいいよ。セリム」
「じゃあエド…ワードさん……お願いです。僕に錬金術を
教えて下さいませんか?」
「……おいおい、本気かよ」
「本気です!僕は錬金術師になって、社会のためにそれを
役立てたいんです。母に昔のことを聞いて思いついたわけ
じゃありません…ずっと考えていたんです!」


一息にそこまで言い切った僕をまっすぐ見下ろす彼の瞳は、
まるでそれ自体が錬金術の奥義のような色をしていた。
何千年を経ても不滅の金属……黄金。
錬丹術の本で読んだ完全なる人「金人(きんひと)」とは、
もしや彼のような者ではなかったのだろうか――。


「……はは。参ったなぁ。運命ってほんとにあるのかな」
「え?」
「オレの手のひらの上で泣いてたくせにさ」
「?」
「ごめん。いーんだ。面白いよなぁ未来って」
「??」


何の比喩だろうとドギマギして思いを廻らす僕の背中を、
彼はにやりとしながら勢いよく叩いた。


「お母さん、呼んでくれるか?」
「……はい!今すぐ!」


子供のようにバタバタと駆け出しながら、ふとデジャ・ヴ
を感じて僕は額に手を当てた。

なぜだろう…とても幸せな気持ちにつつまれるといつも、
僕はああ昔もこういうことがあったなと思ってしまう。
そしてなぜか無意識に、額の母斑に触れてしまうのだ。
まるで何かへの感謝のように。


















17歳になったセリムと33歳くらいのエドの会話。
えっBLっぽい?いえいえノーマルですよぉv
いつかの図書館での会話が、エドを先生にして
今度こそ現実になったら面白いのにと思って…。
でもたぶん、エドはその後も気になって夫人の
ところにちょくちょく顔を出してると思うので、
恐らくセリムが17歳になるまで再会していない
はずはないと思うんですけどね(笑)(エドの
子供たちはセリムと年が近いわけだし)
それにエドが後進の育成にあたるかどうかも疑
問ですが…でもちょっと妄想してみましたv
あ、錬丹術の本は将来きちんとアメ国にも普及
してると思います。そのへんも因果です(笑)